国産の菜種油を調べていると「玉締め圧搾法」で作られていると書かれている商品を見かけませんか?
玉締め圧搾法は、菜種などから油を抽出する方法の一つです。
この方法で抽出されていると何がいいのでしょう?一般的な抽出方法で作られた菜種油と何が違うのか調べてみました。
菜種油について
菜種油は、菜種(アブラナ科の種)から抽出した食用油です。
油の精製度合いや原材料の菜種の品種によって、サラダ油やキャノーラ油のように名前を分けて呼ばれることもあります。
今回はサラダ油やキャノーラ油も含めて、菜種を原材料とする油を菜種油として調べてみました。
菜種油とサラダ油の違いは、こちらで紹介しています。
菜種油の抽出方法について
菜種などの原材料から食用油を抽出する方法は、大きく3つあります。
- 圧搾法
- 抽出法
- 圧抽法
圧搾法
原材料に圧力をかけて油を抽出する方法です。菜種やごま、紅花など油分の多い原材料に使われます。
溶剤などの薬品を使わないので、原材料の風味や味が損なわれず、安心して食べられる点がメリットです。
圧搾法では原材料に含まれるすべての油分を抽出できないので、他の抽出方法と比べて価格が高くなる点がデメリットです。
抽出法
溶剤(溶媒)を使って原材料から油を抽出する方法です。大豆や米(米ぬか)など油分の少ない原材料からも油を抽出できます。
溶媒(ようばい、英: solvent)は、他の物質を溶かす物質の呼称。工業分野では溶剤(ようざい)と呼ばれることも多い。最も一般的に使用される水のほか、アルコールやアセトン、ヘキサンのような有機物も多く用いられ、これらは特に有機溶媒(有機溶剤)と呼ばれる。
引用元:Wikipedia – 溶媒(溶剤)
この方法なら原材料に含まれている油分の99%を抽出できると言われています。圧搾法と比べると価格が安い点、油分の少ない原材料からも油を抽出できる点がメリットです。
溶剤には、ノルマルヘキサンという石油系溶剤がよく使われています。
ノルマルヘキサンは、油の精製過程で取り除かれるので、商品には含まれていないと言われていますが、本当にまったく残っていないのか不安ですよね。この点がデメリットになります。
ノルマルヘキサンは、無色透明な揮発性の液体で、思わず顔をしかめてしまうほどツンとくる異臭がするそうです。直接吸い込んでしまうと、めまいや手足の感覚麻痺、歩行困難などの症状がでることも。商品に残らないと言われても、怖いですよね。
ヒトへの急性影響の報告は少ないが、眼への刺激や皮膚の発赤が知られている。(中略)
ポリエチレンラミネート工場で本物質を使用していた労働者に、四肢の知覚障害、筋力低下、筋萎縮、歩行障害などの症状を呈した多発性神経障害が発生した。
引用元:環境省 – 化学物質の環境リスク初期評価 – n-ヘキサン
圧抽法
圧搾法と抽出法を併用する方法です。まず圧搾法で抽出し(一番搾り)、さらに抽出法で原材料に残っている油(二番絞り)を取りだします。
抽出した2つの油を混ぜて商品化するメーカーもあれば、一番搾りは家庭向け商品に、二番絞りは業務用商品にと用途を分けているところもあります。
抽出法同様に価格が安いことがメリットです。二番絞りは溶剤での抽出になるので、二番絞りが混ぜられている商品は健康への不安を感じる点がデメリットですね。
玉締め圧搾法について
玉締め圧搾法は、圧搾法の1つです。
圧搾法は菜種などの原材料に圧力をかけて油を抽出します。その圧力の加えかたは、次の2つに分類されます。
- 押しつぶす「玉締め方式(直圧式圧搾)」
- すりつぶす「スクリュープレス方式」
玉締め方式とスクリュープレス方式の違い
玉締め方式(直圧式圧搾) | スクリュープレス方式 | |
抽出方法 | 菜種に強い圧力を加えて、圧し潰して油を抽出する。 | スクリューの回転で菜種をすり潰し、油とカスを分離しながら油を抽出する。 |
メリット | ろ過(ろ紙やろ布)の機能がついているので、キレイな油がとれる。 | 自動で連続作業ができ、大量生産向き。 |
デメリット | 都度、手作業が必要で、1回の抽出に手間と時間がかかり、大量生産に向かない。 | ろ過の機能がついていないので、微粉や殻が油に混ざり、濁った油になる。(ろ過工程が別で必要) |
近年では大量生産に向くスクリュープレス方式が主流になっていますが、昔から使われてきた手法は玉締め方式でした。
玉締め方式では、生搾り(非加熱)で高品質、比較的きれいな油がとれます。ですが、1回の抽出に手間と時間がかかり少量しか作れないため、高価になりがちです。
玉締め圧搾法と一般的な抽出方法での菜種油の違いとは?
作り方と添加物について
菜種油のつくり方はメーカーによりさまざまですが、今回は次の2つのつくり方で違いをみていきます。
- 玉締め圧搾法 - いまでも昔ながらの手法で作っている「平出油屋」さんのつくり方
- 一般的な抽出方法 - 日本植物油協会で紹介されている圧抽法でのつくり方
工程 | 平出油屋さんの玉締め圧搾法 | 一般的な圧抽法 |
原料の前処理 | 1.乾燥(焙煎) 2.徐塵 3.圧編(粉砕) 4.蒸熱 5.息抜き |
1.乾燥 2.粗砕 3.加熱 4.圧編(粉砕) |
搾油・精製 | 1.圧搾 2.ろ過 |
1.圧搾 2.溶剤抽出 ★ノルマルヘキサン 3.脱溶剤(ノルマルヘキサン除去) 4.脱ガム 5.ガム調整 ★りん酸 6.脱酸 ★水酸化ナトリウム(苛性ソーダ) 7.水洗 8.脱色 ★白土 9.ろ過 ★ろ過助剤 10.脱臭 11.ろ過 ★ろ過助剤 |
平出油屋さんの搾油・精製工程のシンプルさにびっくりします。玉締め圧搾機で抽出したら、手すき和紙で時間をかけてゆっくりろ過して完成。もちろん化学処理なし、酸化防止剤も未使用、無添加です。
一般的な圧抽法は、色々な添加物(★部分)をいれて作られています。
なかでも「6.脱酸」で使われる水酸化ナトリウムは、劇物に指定されている薬品です。
強塩基(アルカリ)として広汎かつ大規模に用いられ、工業的に非常に重要な基礎化学品の1つである。毒物及び劇物取締法により原体および5 %を超える製剤が劇物に指定されている。
引用元:Wikipedia – 水酸化ナトリウム
脱酸では、水酸化ナトリウムを使い遊離脂肪酸を石鹸(脂肪酸ナトリウム)に変え、取り除く処理をしています。
想像してみてください、自分の家にある油の中に石鹸が沈んでいる姿を。石鹸を取り出して、きれいにろ過したから大丈夫と言われても、その油を使った料理を子供に食べさせますか?私なら捨てます。
健康への影響について
心筋梗塞などのリスクがあるトランス脂肪酸
圧抽法で作られる菜種油には、過剰に摂取すると心筋梗塞などのリスクがあるトランス脂肪酸が含まれています。「10.脱臭」の工程で菜種油を高温で脱臭することで、トランス脂肪酸が生成されます。
平均的な日本人より多いトランス脂肪酸摂取量を基にした諸外国の研究結果によると、トランス脂肪酸の過剰摂取により、心筋梗塞などの冠動脈疾患が増加する可能性が高いとされています。また、肥満やアレルギー性疾患についても関連が認められていますが、糖尿病、がん、胆石、脳卒中、認知症などについての関連は分かっていません。
引用元:厚生労働省 – トランス脂肪酸に関するQ&A – Q3.トランス脂肪酸は健康によくないのですか?
日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は少なく、過剰摂取するリスクは低いと言われていますが、とらずにすむならそのほうがうれしいですよね。
玉締め圧搾法では、菜種油を高温で処理することはないので、トランス脂肪酸は含まれていません。
まとめ
菜種油の抽出方法には次の3つがあり、「玉締め圧搾法」は圧搾法に分類されます。
- 圧搾法
- 抽出法
- 圧抽法
一般的に使われているのは圧抽法です。圧抽法では、ノルマルヘキサンや水酸化ナトリウムのような毒性の強い薬品が圧搾・精製工程で使われるので、健康への不安を感じる方も多いと思います。
玉締め圧搾法は、昔から使われてきた抽出方法で、菜種を押しつぶして油を抽出します。化学処理せず、酸化防止剤などの添加物も未使用。熱処理もしないためトランス脂肪酸も含まれません。安心して食べることができますね。
平出油屋さんは、玉締め圧搾法で菜種油をつくっている数少ない油屋さんです。「できるだけ自然に、そして香りがよく美味しい油を」という信念のもと、国産の菜種を原材料に、ていねいに作られています。
もちろん、無添加で化学処理も熱処理もされていないので、安心して口にできる菜種油です。
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