妊娠中は、悪阻(つわり)のためにご飯を食べれなかったり、風邪になっても風邪薬が飲めずに治りが悪かったりするので、栄養補給のために栄養ドリンクを飲みたいと考える妊婦の方も多いですよね。
でも、妊婦が栄養ドリンクを飲んでも大丈夫なのでしょうか?
調べてみると、妊婦が栄養ドリンクを飲むには、商品の選び方や飲むタイミングなど、いくつか注意したほうがいいことがあったので紹介します。
また、胎児への影響を気にせずに飲める栄養補給のドリンクも併せて紹介します。
栄養ドリンクとは
栄養ドリンクと呼ばれる飲み物は、次の2つに分けることができます。
- 医薬品医療機器等法により医薬品(第2類医薬品、第3類医薬品)、医薬部外品に分類されるドリンク
- 清涼飲料水や炭酸飲料水などに分類されるドリンク(エナジードリンクとも呼ばれます)
医薬品または医薬部外品に分類される栄養ドリンクは、成分の配合量の表示が義務付けられていますが、清涼飲料水などに分類される栄養ドリンクには成分表示の義務がありません。
後ほど詳しく説明しますが、栄養ドリンクには妊婦が注意したほうがいい成分が含まれています。
もし栄養ドリンクを選ぶなら、どんな成分が含まれているのか事前に確認することができる「医薬品、医薬部外品」に分類されるものを選ぶことをおすすめします。
例えばリポビタンDは医薬部外品で、レッドブルは清涼飲料水に分類されます。
妊婦が栄養ドリンクを飲む時の注意点
「疲労」研究の第一人者で『「疲れリセット」即効マニュアル』の本も書かれている医学博士の梶本修身先生は、栄養ドリンクを常用することは危険だと話しています。
理由は、栄養ドリンクには大量のカフェインと、微量ですがアルコールが含まれているからです。
栄養ドリンクを飲んだあとに「スッキリして目がさえた」というような、疲れが軽減されたという感覚を持つ人はかなりいるでしょう。
それは、ドリンクに含まれている大量のカフェインの覚醒作用と、微量のアルコールの気分高揚作用によるものです。
たしかに「疲労感」は薄まるかもしれませんが、「疲労そのもの」はまったくなくなっていないのです。
引用元:週刊ダイヤモンド「栄養ドリンク」を飲み続けると疲労は逆に蓄積する
カフェインやアルコールは、妊娠中に気をつけるべき食べ物と言われていますから、どの程度含まれているのか、気になりますよね。
妊娠中に気をつけるべき嗜好品はありますか?
妊娠中のアルコールや喫煙は、胎児発育遅延や先天異常などを起こす可能性があるといわれています。「このくらいまでなら大丈夫」という量がわかっていませんので、全妊娠期間を通じて、禁酒・禁煙をすることをおすすめします。
カフェインの大量摂取は、流産、低出生体重児などの原因となる可能性があるとされていますので、コーヒーなどのカフェイン飲料の飲み過ぎには注意が必要です。
引用元:国立成育医療研究センター – 妊娠中・授乳中のお薬Q&A
カフェイン
イギリスの食品基準庁では、妊婦がカフェインを取りすぎることで胎児が低体重となり、将来の健康リスクも高くなる可能性があるとして、妊婦のカフェイン摂取量の上限を示しています。
その他にも世界保健機関(WHO)、カナダ保健省でも胎児への影響を懸念し、妊婦に対しカフェインの摂取量に注意するよう呼び掛けています。
1日あたりの最大摂取量 | 飲料換算 | 機関名 |
200㎎ | コーヒー マグカップ2杯 | イギリス食品基準庁 |
300㎎ | コーヒー マグカップ2杯 | カナダ保健省 |
- | コーヒーカップ3~4杯 | 世界保健機関(WHO) |
日本では、具体的な数値は提示されていませんが、厚生労働省や農林水産省から「カフェインの過剰摂取」に対する注意が呼びかけられています。
参考:厚生労働省 – 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
普段からコーヒーを飲んでいる妊婦が栄養ドリンクを飲む場合は、摂取量が多くならないように気を付けるか、カフェインが入っていないものを選ぶようにしてください。
商品名(容量) | カフェイン含有量(1本) |
[参考]缶コーヒー ボス ブラック(185ml) | 約93mg (100mlあたり50mg) |
リボビタンD (100ml) | 50mg |
チオビタドリンク(100ml) | 50mg |
エスカップ(100ml) | 50mg |
チョコラBBドリンクビット (50ml) | ノンカフェイン |
リポビタンノンカフェ(100ml) | ノンカフェイン |
※成分表などでは「無水カフェイン」と表示されている場合もあります。
アルコール
妊婦にとって、たとえ少量でもアルコールが含まれているというのは気になりますよね。
妊娠中にアルコールを飲むと胎盤を通してそのまま胎児に送られ、胎児性アルコール症候群(耳や目が小さいなどの顔を中心とする奇形や発育障害、知能障害)を引き起こす危険性があります。
少量のアルコールなら影響がないように思えますが、飲んでも問題がないアルコール量は明らかになっていません。
詳細はこちらの記事で紹介しています。
栄養ドリンクにアルコールが入っているイメージはないかもしれませんが、成分表を気をつけて見てみると、確かにアルコールが含まれている栄養ドリンクがいくつかありました。
商品名(容量) | アルコール含有量 |
[参考]缶ビール のどごし生(350ml) | 17.5ml(5%) |
チオビタゴールド(30ml) | 0.2mL以下 |
エスカップ(100ml) | (含有量未記載) |
リポビタンファインプレシャス(100ml) | 0.15mL以下 |
チョコラBBドリンクビット (50ml) | 0.1mL |
成分表などにアルコール(エタノール)が含まれていることが記載されていれば、その商品を選ばなければいいのですが、記載がなくてもアルコールが含まれている栄養ドリンクが多いようです。
理由は、水に溶けにくい薬効成分を溶かすためにアルコールが使われ、わずかに残っているためです。1%以下のため商品説明などにはアルコールが含まれていることが書かれていない場合も多く、かといって表記がないから入っていないとは限りません。
アルコールが入っているか不安な場合は、メーカーに問合せてみましょう。
まずはオロナミンCに含まれるアルコールですが、実際メーカーに問い合わせたところ、ガラナ成分の抽出時や香料などにアルコールが使われており、現在では1本(120ml)中の約0.4%にあたる0.48mlほどアルコールが含まれているとのことです。
1984年の北海道消費者協会などのデータによると、ドリンク剤ではリポビタンDが100ml中約0.3ml、新グロモントで100ml中約0.6ml、ユンケルDには50ml中0.8ml含まれています。
引用元:薬とアルコール
妊婦検診での注意点
栄養ドリンクは、妊婦検診の尿検査の色や数値に影響が出る可能性があります。
栄養ドリンクを飲むと尿が濃い黄色になることがあると聞いたことはありませんか?
これは栄養ドリンクにたくさん入っているビタミンB2の影響です。ビタミンB2は必要な量を超えて摂取すると尿中に排出されます。ビタミンB2の色が黄色なので、尿の色も濃くなるわけです。
栄養ドリンクは、妊婦検診の前日、または当日には飲まないようにしましょう。もし飲んだ場合は、検査を受ける前に栄養ドリンクを飲んだことを伝えるようにしましょう。
定性検査とは、尿の色、濁り、糖、タンパクなどの成分があるか・ないかを調べます。
健康な人の尿は、淡黄色で濁りがありませんが、たくさん汗をかいた時などは濃縮して濃くなります。また、飲み物や薬によっても色が変化します。たとえば、
ビタミンBがたくさん入っている健康ドリンクのような飲み物を飲んだときには、黄色い蛍光の尿になります。
ビタミンCは一部の検査の結果に影響が出ますので、注意が必要です。ビタミンなどの薬や、健康ドリンクは検査結果に影響を与えます。服用されている方は、お申し出ください
引用元:大塚病院 – 尿検査時の注意について
妊婦が安心して飲める栄養補給のドリンクは?
カフェインやアルコール、妊婦検診への影響を気にせずに栄養補給ができるドリンクはないのでしょうか?
先ほど紹介した梶本修身先生によると、「甘酒」はカフェインやアルコールが含まれてなく、バランスのよいタンパク質の補給になるそうです。
甘酒は「飲む点滴」とも呼ばれ、夏バテ対策や風邪予防として人気があります。
甘酒には、ビタミンB2だけでなく葉酸も含むビタミンB群や必須アミノ酸、ミネラル、ブドウ糖が豊富に含まれています。
お腹の赤ちゃんの脳や脊髄の元になる神経管の形成に必要とされています。
参考:農林水産省 – 妊婦に大切なビタミン、葉酸
妊婦が甘酒を飲むときの注意点は、米と米麹でつくられた「米麹甘酒」を選ぶことです。
甘酒には酒粕でつくられた「酒粕甘酒」と、米と米麹でつくられた「米麹甘酒」の2種類があります。「酒粕甘酒」はアルコールが含まれてしまいます。「米麹甘酒」はアルコールもカフェインも含まれていないので安心して飲むことができます。
まとめ
妊婦が栄養ドリンクを飲む場合は、次のような点を気をつけて選んだり、飲んだりする必要があります。
- カフェインの摂取量
- アルコールが含まれているかどうか
- 妊婦検査の前日や当日には飲まない
胎児へのカフェインやアルコールの影響を気にしながら栄養ドリンクを飲むなら、天然の栄養ドリンクである「甘酒」のほうが安心して飲めるのではないでしょうか?
甘酒を選ぶときは、酒粕の使われていない「米麹甘酒」を選びましょう。アルコール0%でカフェインも含まれていないので、安心して飲むことができます。
もっと知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
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